『Clair Obscur: Expedition 33』レビュー - Sekiroライクな緊張感がたまらない!戦闘狂におすすめのターン制RPG
1.はじめに - 久しぶりに感じた「JRPGのワクワク感」
最近、発売前から注目を集めていたRPG『Clair Obscur: Expedition 33』をクリアしました。個人的に、久しぶりに骨太なJRPGの良さを感じさせてくれる、素晴らしい作品でした。
結論から言うと、QTEを巧みに取り入れたこのゲームの戦闘は最高に面白く、歯ごたえのある難易度の中で、どうすれば勝てるのか、パーティーのビルドを試行錯誤する時間はまさに至福のひとときでした。一方で、ストーリー展開やシステム面で少し気になる点があったのも事実です。
本記事では、そんな『Clair Obscur: Expedition 33』をプレイして感じた魅力と、改善を期待したい点を率直にレビューしていきたいと思います。
2.『Clair Obscur: Expedition 33』とは? - 死の運命に抗う、絶望と希望の旅
本作は、年に一度「ペイントレス」と呼ばれる存在が死の絵を描き、その絵に描かれた年齢の人々が全て消滅してしまうという、非常に過酷な世界が舞台です。プレイヤーは、次の年に消される運命にある「33歳」の者たちで構成された「第33次遠征隊」の一員として、ペイントレスによる死のサイクルを断ち切るため、壮絶な旅に出ます。
どこか『進撃の巨人』を彷彿とさせるような、抗いようのない大きな運命に立ち向かうダークな世界観が、本作の大きな特徴です。
3.プレイ感想①:戦闘と戦略 - 緊張感と間口の広さが両立した、理想のバトル
このゲームの核心であり、私が最も称賛したいのが、QTE(クイックタイムイベント)要素を組み込んだユニークな戦闘システムです。
ターン制RPGと聞くと、コマンドを選んで見ているだけ…という単調さを想像する方もいるかもしれませんが、本作は全く違います。味方の攻撃時にはタイミング良くボタンを押すことでダメージが上昇し、敵の攻撃時には完璧なタイミングで防御や回避を入力することで、戦況を有利に進められます。
特に敵の攻撃に対するQTEは秀逸で、単なる防御ではありません。タイミングに合わせてボタンを押すことで、「回避」と「パリィ」という2種類の基本アクションが発動します。
- 回避: 敵の攻撃を完全に無効化します。タイミングは比較的易しめです。
- パリィ: よりシビアなタイミングが求められますが、成功すればダメージ無効化に加え、カウンターが発動して大きな反撃チャンスが生まれます。
この「難しいがリターンが大きいパリィ」を狙うか、「安全に回避を優先するか」という駆け引きが、戦闘に深い戦略性と緊張感をもたらしています。
実は、私はこのゲームをプレイする直前まで、フロム・ソフトウェアの『SEKIRO』に没頭していました。 そのため、敵の攻撃に合わせてタイミング良くボタンを押し、攻撃を捌いていく本作のパリィシステムには、『SEKIRO』の「弾き」にも通じる、あの心地よいリズムとヒリつくような達成感を強く感じました。ターン制RPGでありながら、あのアクションゲームさながらの攻防の駆け引きが味わえる点は、個人的に非常に刺さったポイントです。
「パリィが難しいなら、アクションが苦手だと厳しそう…」と感じるかもしれませんが、その心配は無用です。リターンが大きい分、タイミングがシビアなのはあくまで「パリィ」だけで、それ以外の「回避」や「ジャンプ」といった防御手段は、かなり易しく設定されています。得意な人はパリィでスリルを、苦手な人でも簡単な回避行動を駆使すれば十分に攻略可能、という絶妙な難易度設計が非常に好印象でした。
この戦闘の面白さゆえに、終盤は「やられる前にやる!」という高火力・短期決戦型の戦法にシフトしていき、「どうすれば最大火力を叩き出せるか?」を考えるビルド構築の試行錯誤が、本作のもう一つの大きな楽しみとなりました。
4.プレイ感想②:ストーリーと気になるシステム周り
戦闘システムが素晴らしかった一方で、ストーリーやUIなど、いくつかの点では物足りなさや改善の余地を感じました。
まずストーリーですが、導入は絶望的な世界観と遠征隊の目的が提示され、非常に引き込まれるものでした。序盤から中盤にかけては、世界の謎や登場人物たちの過去が少しずつ明らかになり、物語を追っていく純粋な楽しさがありました。 しかし、それだけに終盤の展開が少し淡白で、尻すぼみに感じてしまったのが惜しい点です。
また、これは私だけかもしれませんが、登場人物たちの顔と名前がなかなか一致せず、イベントシーンで「この人、誰だっけ…?」となってしまうことがありました。キャラクターモデルが少しチープな印象を受けたことも、感情移入しきれなかった一因かもしれません。
さらに、システム面ではマップとUIの分かりにくさが気になりました。ワールドマップも個別のダンジョンマップもやや見にくく、どこに行けるのかが直感的に分かりづらい場面がありました。また、ワールドに点在するダンジョンの数が非常に多いのは嬉しい悲鳴なのですが、マップ上で攻略済みかどうかが一目で分かるようになっていれば、なお良かったと感じます。探索に熱中していると、「あれ、このダンジョンはもうクリアしたっけ?」と忘れてしまうことが何度かあったのです。
こうした分かりにくさは、探索の歯ごたえを出すための意図的なデザインかもしれませんが、快適にプレイするためにも、せめてミニマップや踏破済みのアイコン表示などが欲しかったというのが正直なところです。加えて、UI(メニュー画面など)も独特なデザインで、慣れるまではどこに何があるか少し分かりにくく感じました。
5.コストパフォーマンスと総合評価
本作の価格は7,500円程度と、昨今のフルプライスゲームの中では比較的手頃な設定です。さらにGame Passにも対応しているため、加入者であれば非常にお得にプレイすることができます。私は寄り道しながらあちこち探索し、クリアまで概ね50時間ほどかかりました。このボリュームを考えると、価格には十分に満足できました。
また、特筆したいのがBGMの良さです。特に戦闘BGMは、おそらく敵ごとに専用の曲が用意されているようで、曲数が非常に豊富でした。耳に残る素晴らしい楽曲が多く、戦闘の没入感を一層高めてくれました。
総合的に見て、『Clair Obscur: Expedition 33』は、「戦闘と戦略の面白さに振り切ったRPG」だと感じました。もしあなたが、単調なコマンドバトルに飽き飽きしているなら、あるいは高難易度の敵に対して最適なビルドを考え抜くのが好きなら、本作は間違いなく「買い」です。
個人的な評価としては、100点満点中85点。ストーリーやシステム面にいくつかの不満点はあるものの、本作の核である戦闘の面白さ、そしてそれを彩る素晴らしいBGMが、それらを大きく上回る非常に満足度の高い体験を提供してくれました。
6.まとめ - こんな人におすすめ!
『Clair Obscur: Expedition 33』は、そのダークな世界観と、何よりもユニークで戦略的な戦闘システムが光る一作でした。全体を通して、忘れかけていたJRPGならではの「冒険と試行錯誤の楽しさ」を再確認させてくれます。
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こんな人におすすめ!
- アクション性のあるターン制RPGが好きな人
- 『SEKIRO』のような緊張感のある攻防を楽しみたい人
- キャラクターのビルドやパーティー編成を試行錯誤するのが好きな人
- アクションが苦手でも、歯ごたえのあるRPGに挑戦したい人
- Game Passに加入している人
ストーリーやキャラクターに完璧を求める方には少し物足りない部分があるかもしれませんが、それを補って余りあるほど戦闘が面白く、熱中させてくれる力を持った作品です。戦闘好きのゲーマーから、じっくり戦略を練りたいRPGファンまで、ぜひ一度このヒリつくような遠征の旅を体験してみてほしいと思います。