1.はじめに:本棚の肥やしが、重い腰を上げさせた
私は、ミニマリストではない。しかし、明確に「不要」だと分かっているものを持ち続けるのは、好きではない。 先日、休日にふと本棚を眺めていると、そこには買ったはいいが、しばらく読んでいない本が鎮座していた。いわゆる「積読」とは少し違う。一度は読んだが、もう私の人生において役割を終えた本たちだ。
これまでは「いつか処分しよう」と先延ばしにしていたが、ついに重い腰を上げ、捨てる以外の選択肢として「メルカリ」を試してみることにした。
▼ この記事から分かること
- 面倒くさがり屋でもメルカリを始められた、リアルな第一歩
- 初心者が戸惑う「配送方法」の情報量と、その対処法
- メルカリの本当の価値が「売上金」ではない、その深い理由
- メルカリを通じて、「未来の無駄遣い」を減らすための思考法
2.驚くほどスムーズだった、初めての出品体験
正直なところ、出品作業は面倒だろうと高を括っていた。 しかし、実際にやってみると、その手軽さに驚かされた。
出品したのは、本8冊。 アプリの指示に従い、スマホで商品を数枚撮影し、状態を書き込む。価格設定は、すでに出品されている他の人の価格や、売却済みの相場を参考にすればいいので、悩むことはなかった。一連の作業は、実にスムーズに進んだ。
そして、最も驚いたのは、その反応の速さだ。 出品した日のうちに、早速3冊の買い手がつき、あっという間に売れていった。このスピード感には、「一体、どれだけの人がこのアプリを使っているんだ?」と、思わず声が出たほどだ。
調べてみたところ、メルカリの月間アクティブユーザー数は、実に約2300万人にものぼるらしい。日本の人口の5人に1人近くが、毎月このアプリを使っている計算になる。なるほど、これだけの巨大な市場があるからこそ、不要になった本でも、必要としている人の目に留まり、すぐに売れていくわけだ。
購入者とのやり取りも、アプリに用意された定型文でほぼ完結する。なんとラクなことか。
3.初心者が戸惑う「配送」という名の情報過多と、その整理術
しかし、一つだけ「これは最初に調べておかないと戸惑うな」と感じた場面があった。「配送方法」だ。
「らくらくメルカリ便」「ゆうゆうメルカリ便」…。様々な選択肢があり、それぞれにサイズや料金、発送場所が細かく設定されている。これは、つまずくというより、あまりの情報量の多さに、どれを選ぶのが最適解なのか、すぐには判断できなかった、というのが正直な感想だ。
そこで、今回私が調べた範囲で、この二つの主な違いを整理しておきたい。
▼ 「らくらくメルカリ便」と「ゆうゆうメルカリ便」のざっくり比較
こうして見ると、自分の生活圏で近くにあるコンビニがセブン-イレブンやファミリーマートか、それともローソンか、という点が大きな判断基準になりそうだ。
今回、私は「ゆうゆうメルカリ便」の中でも、特に手軽だと感じた「ゆうパケットポスト」を利用した。 これは、専用の「発送用シール」さえあれば、コンビニに行く必要すらなく、近所の郵便ポストに投函するだけで発送が完了するという、驚くほど合理的な方法だ。
やり方は、
- 商品を梱包する。
- 「発送用シール」を商品に貼り付ける。
- シールに印字されているQRコードを、メルカリアプリで読み取る。
- 郵便ポストに投函する。
これだけだ。 幸い、私の配偶者がメルカリ経験者だったため、発送用シールは自宅に常備されていた。このシールは、郵便局やローソンなどで購入できるらしい。
まずは、自分の生活圏に合わせてどちらのサービスをメインで使うか決め、必要な梱包材やシールを準備しておくと、いざ売れた時にスムーズに動けるはずだ。
4.「売上金」という嬉しい誤算と、その悩ましい使い道
今回の主な目的は断捨離であり、売上金は二の次、三の次と考えていた。しかし、そうは言っても、実際に手元に入ってくるお金は嬉しいものだ。この嬉しい誤算を、どう活用するのが最も合理的か。
まず、売上金を現金化するのは手数料(200円)がかかるので問題外だ。最も効率的なのは、手数料ゼロで使える「メルペイ」残高として活用することだろう。
しかし、ここで二つの問題が浮上する。 一つは、「メルペイが、自分の生活圏の、本当に用のある店で使えるのか?」という、極めて現実的な問題。 そして、より本質的な問題が、メルカリの売上は「安定しない」ということだ。
理想を言えば、この売上金で食費や日用品といった「ランニングコスト」を賄い、その分浮いた現金を投資に回したい。しかし、いつ、いくら入ってくるか分からない不確定な収入を、毎月の支出計画に組み込むのは合理的とは言えない。
だから、現時点での私の結論はこうだ。「メルペイ残高は、あくまで『臨時収入』として捉える。普段の生活圏で使える場所があれば、そこで使う。それによって、本来の家計から現金が出ていくのを防ぐ」という、補助的な使い方に留めておくのが賢明だろう。
なぜなら、今後売上が「安定」するほど出品を続けるのは、そもそも目指すべき姿ではないからだ。 この売上金は、過去の買い物を清算する過程で得られる一度きりのボーナスであり、これが尽きた時こそ、私の消費行動が改善された証となる。
5.メルカリが教えてくれた、本当の価値
一連の作業を終えてみて、気づいたことがある。 メルカリで得られる最も大きな価値は、数百円、数千円の売上金ではない。それは、「過去の自分と向き合い、未来の消費行動を正す」という、一種の戒めや反省を得る機会そのものだ。
一冊一冊、本を出品するたびに、自問自答が生まれる。 「なぜ、自分はこれを買ったのだろうか」「本当に、これは必要だったのか」
この経験を経て、私の買い物の判断基準は、より厳格になった。 「これを将来、メルカリに出品することにならないか?」 何かを買う前に、そう考えるようになったのだ。
6.まとめ:捨てる前に、そして買う前に
メルカリは、慣れてしまえば非常に手軽なツールだ。 今後は、何かを捨てる前に「誰かが必要としているかもしれない」と、一度メルカリを覗く習慣がつきそうだ。
しかし、それ以上に大きな変化は、何かを買う前の思考にある。 不要なものを手放す経験は、結果的に、これから自分の人生に迎え入れるものをより一層真剣に選ぶための、最高の訓練となる。メルカリは、私にとってそういう場所になった。